ウィリアム・ホルブルック・ビアードについて
ビアードは動物の絵画で有名な画家である。
主にクマ、サルなどがお気に入りで、多くは人間味に富んでおり、絵からは声が聞こえてくるようである。より確信を持っていえばビアードの描く動物たちは鳴き声ではなく、声を発するのである。
しゃべる動物のどこが珍しいのかと、いろんな作品に出会ったことのあると自負している人はおもうかもしれない。様々なものが喋れるように半擬人化され、枠で区切られ、セリフをつけられている現状を見ればそれは極自然なことだと。
ただ、よく考えれば動物が人の言葉を喋っているように見えるのは不思議なことである。恐らく絵だけの効用ではあるまい、主にセリフの影響なのだ。
実際、しゃべる猫だとか犬だとか検索を掛けてみるとそれらが出ている何かの漫画の一コマが出てくるがセリフがないと途端に何を言っているのか想像できなくなる。悲しそうだとか嬉しそうだとかニュアンスは分かるものもあるがそれ以上想像するのは難しい。漫画というものは枠の連続性によって物語を進めるものであるから、これは妥当であるが、端的に絵として捉えればビアードを上回るのは難しい、それだけ大いに評価される表現や想像性を彼の作品は持っている。
例えばこの絵、物語を想像させるのに十分な力を持っている。親グマと子グマ。愛おしそうに撫でる片方と恥ずかしそうにしながらもそれを受け入れる一方。
親グマの手には何かがあることから子グマがそれを拾ってきて渡して褒められているようにも見える。あるいは右奥の子グマとその何かを巡って喧嘩をして、説教を食らった後、それでも愛されているということを伝えられている最中かもしれない。
これだけ想像を掻き立てられ、愛くるしい絵画は当時にしろ現代にしろ稀であろう。