モルデカイ・アードンについて
モルデカイはクレーの影響をよく受けていると言われている。
何が描かれているのか明確には分からない抽象性、不正確な図形の採用は確かにその証拠のように思えるし、彼らがドイツ・バウハウスにて一時生徒と教師という立場にあったことはそれを決定づけている。
ただ、描かれているものはクレーの内向的な性質に比べるとかなり外向きな印象を与える。多くの作品に見られる鮮烈な色使い、空や特に宇宙を喚起させる構図はその時代宇宙が身近なものになったのだろうなと横道に逸れて考えさせられる(逆にいえばクレーは全く宇宙に触れることができなかったのだろうとも)。
もちろん、そんな背景を気にせずとも絵の圧倒される包容力を感じられると思う。
クトゥルフ神話に代表されるコズミック・ホラーは自分たちの理解できない価値観、感性が恐怖を感じさせるものだが、モルデカイのものは同じく理解不能なものでもそれに守られている、包み込まれているような感覚を受ける。
政治的、社会的な利用を受けない純粋な芸術を信仰していたモルデカイならではの作品だと言えるだろう。