The arts of gravity

アート全般に関する評論もとい紹介

ヘンリー・トーマス・アルケンについて

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あまり関わりのない人に趣味を聞いた時、当然のように「乗馬」という答えが返ってきたとする。

 

長年の習い事、または健康志向や物珍しさから比較的最近始めたのか。そんなことを思いつつ、なんというべきかと思索する。多少心得のある範疇から抜けているものにどう返せばいいのか。気心の知れた仲なら貴族趣味だとか金持ちだとか言ってみるのが場合によっては効果的かもしれない。だがそういうわけにもいかない、困ったものだ。

 

18世紀のイギリスでは財だけでなく教養のあってしかるべき者だけが馬を駆ることができた。当時に起きた産業革命は汽車によって庶民にも狩りを普及させたが、逆説的にはそれだけ馬が貴族の独占の中にあったということである。乗馬専用の服や帽子を着て、狩りに赴くのが当時の貴族の娯楽だった。

 

アルケンはそれに滑稽さという側面を見出した作品を度々出版した。

 

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馬を乗りこなせず、背から落ちたり木に引っかかる貴族たち。非常にユーモラスで思わず笑みがこぼれるが、引いてみればそれだけでなくこの時代には権威をある程度否定的に書けるようになっていたというのもわかる。民衆が力を持ち始めた啓蒙時代は風刺画というものをかなり盛んにしたらしく、特に貴族が槍玉に上がるのは珍しくなかった。

 

 

その中でもっとも陳腐なものは金や権力にがめつく、浪費が激しいといった権力者への典型的であまりに通俗的な批判を提示するものだろう。それを提示することは逆説的に金や権力を自由に行使するなという文句であり、これはどうしてもルサンチマンから抜け出すことができない。代わって優れたものは当時の政治的状況や文化を取り入れ、風刺の対象に恥を感じさせるものである。その点アルケンは当時の文化を取り入れながらユーモラスに貴族への嫌味を提示するのに成功している。

 

その他彼が描いたテーマとして冬の景色も素晴らしい。

 

 

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parabolic life

Parabolic life