The arts of gravity

アート全般に関する評論もとい紹介

ジェイコブ・ローレンスについて

 

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人生についての、価値観、哲学を起伏させること。

これこそが芸術家にとって最も重要である。

My belief is that it is most important for an artist to develop an approach and philosophy about life 

 

そう唱えたジェイコブ・ローレンスは主に黒人を主題にした画家であった。

 

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簡潔だが印象的なグラフィック、当時の黒人が置かれた状況を彷彿とさせるシーンの設定は芸術というよりは政治的な色彩を多分に含んだイラストレーションのように見受けられるかもしれない。

 

しかし最初に記した彼の言葉を踏まえると、彼自身は政治性を主としているわけではなく、あくまでも自己を表現するものとしてみていたようである。

 

そもそも彼自身を描く上で黒人の歴史に触れないというのは難しいに違いない。当時は政治が生死を左右する時代である。彼の出身地であるアメリカ南部では経済的差別だけなく、法を逸脱した私刑による黒人の死者があった。常に差別と共にあった彼は否応なく、政治的な色彩を使わざる負えない立場にあったのだろう。

 

しかしたとえ政治的な色彩を使っても、それが政治的な物でしかないというのは事を単純に捉えすぎだろう。彼自身もそう見られることを否定するような言動をしている。

 

 

私はいつも歴史に関心を持ってきたのだ。しかしそれらは頑なに、二グロ公教育について沈黙を保ってきた。アメリカ合衆国は二グロを含むことなしに語ることができないというのに。

私は、ただ歴史的なものとして絵を描いたつもりはない。しかしそれが今日の二グロを結びつけるとも信じている。私たちは本来隷属の気質を持つのではなく、経済的な隷属に甘んじているにすぎない。もし人々が今日よりも多くの悪習を捨て去ることができたなら、それらを克服できるはずである。きっと黒人も白人も同じように出来るようになる。私は政治的というより、芸術的である。ただ私のやるべき役割にトライしているのだ。

 

 

 

I've always been interested in history, but they never taught Negro history in the public schools...I don't see how a history of the United States can be written honestly without including the Negro.

I didn't [paint] just as a historical thing, but because I believe these things tie up with the Negro today. We don't have a physical slavery, but an economic slavery. If these people, who were so much worse off than the people today, could conquer their slavery, we can certainly do the same thing....I am not a politician. I'm an artist, just trying to do my part to bring this thing about....

 

 

これらの発言を念頭に置くと彼は黒人という自らのアイデンティティを否定することもしないが、それに依存するつもりもないのだろう。当時では信じられないほど、何の束縛もないかのように色彩豊かな色を纏った黒人たち。理想、つまり何が自分にとって素晴らしいのかただそれだけである。

 

 

 

 

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parabolic life

Parabolic life