ラルフ・アルバート・ブレイクロックについて
一週間ほど前の夜、田舎の直線道の百メートルほど先、道の端に一つの光が見えた。
一見してそれはライトだとわかったが、自転車であるかは定かではない。その割には光が大きすぎる。
判別がつかぬまま近づいていくと初老の男性がカゴ付きの自転車を悠々とこいでいる。すれ違い、去ってゆく、それは案の定というべきか、唯の自転車である。
ただそれが私には少々驚きを持って迎えられた。自転車のライトは車ほど大きくなかったと思うのだが。
考えの正否を幾人に尋ねたが、やはり自転車の明かりはそこまで明るくないというのが多くの人の意見のようである。
より輝き、照らすことを本意とした光が増えてきている、そういうことだろうか?
ブレイクロックはそれに反して仄かな光を提供している。
薄暗い森だが閉塞感はなく、不安感を彷彿とさせない
ブレイクロックは月光という題の作品を幾つも残している。この作品もその一つだ。
その他にも牧歌的な自然風景を多く描いているが、その殆どが夜や夕焼けといった間違えば恐ろしさが際立ってしまうような場面である。ただしそれらは殆どの場合、おおらかさや安らかさ、または神々しさを追求した作品であることに成功している。